ロングトーンで気をつける息のスピード
先月、念願の新しい楽器を購入した大学生。
その楽器での初めてのレッスンでした。
前の楽器も決して吹きにくかったわけではありませんが、やはりプロも使うレベルの上位機種にしたことと、きちんと選定した楽器ということで、鳴りの良さはだいぶ違うようです。
音を押してはいけません
最近、演奏上で気になることがあるそうです。
「音の出だしのタンギングがきついと言われる」
試しに吹いてもらうと、そのことを気にしすぎていて、息のスピードを下げて小さい音で吹き始め(スピードが遅ければ出だしを強く吹くことはできないため)、その後息の速さを上げて、ある程度の音量に持っていく、ということをしていました。
出だしの件の前に、このやり方は、音を押しているように聞こえるため、望ましい吹き方ではありません。
音を押すとはどういう意味?
合奏中などに、クレッシェンドがついている部分を吹いたら、指揮者や一緒に演奏している人達から「音を押さないで!」と言われたことがある方も多いと思います。
これは、上記のように、吹いている最中に息のスピードを変えることによって起こります。
息の量を減らせば、当然音は小さくなり、増やせば大きくなります。
この「減らす」時に、本来は息のスピードを落とさずに吹かねばならないのですが、一定のスピードを保ちながら息の量を絞ることはなかなか難しいため、つい息をゆっくり入れることで絶対量を少なくする方法を選んでしまうのです。
そこから息の量を増やそうとすると、ゆっくりした入れ方では間に合わないので、速さは必然的に上がります。
その息のスピードの違いが、「音を押しているように聞こえる」ということなのです。
クラリネットは楽器の構造上、他の楽器に比べ、息のスピードを落として吹くことが容易にできます。
しかし、その吹き方では音の輪郭もぼやけてしまうし、音程や音色にも差が出てしまいます。
音量によって、息の速さが変わらないように、常に速いスピードの息を意識して吹きましょう。
音の出だしのタンギング
さて、本題の「音の出だしのタンギング」ですが、クラリネットの場合、吹き始めにあえて舌でリードを突くことはしません。
間違って認識されていることが多いのですが、タンギングは「リードに舌を当てる」ことではなく、「リードについていた舌を離す」ことで成立します。
何か音を吹いていて、舌をリードに当てただけでは、次の音には何も関係がありません。
ただ吹いていた音が切れるだけです。
その舌を離すことによって、次の音が生まれ、音の立ち上がりが存在します。
従って、「今から音を吹くぞ」という状況において、わざわざ舌をリードに「バシッ」と当てる必要はなく、ブレスの段階でリードにつけていた舌を、吹く瞬間に離せば、きつくなく、でもクリアな出だしになるのです。
慣れるまでは、勝手がわからず難しいかと思いますが、ごく自然にできるようになるまで、何度も繰り返し練習してほしいと思います。
新しい楽器にも重要なロングトーン
出だしから吹き終わりまで、まっすぐ豊かな音でロングトーンをすることは、曲を自由自在に吹くために、まず必要な練習です。
さらに、新しいクラリネットにおいては、そのロングトーンの仕方が、今後の楽器の鳴りを左右すると言ってもいいくらい、とても大事なことです。
単純だからと言って、惰性で吹くようなことが絶対にないように、常に気を配って吹きましょう。