クラリネットリードの育て方
クラリネットのいいリードの育て方を知りたい、という質問をよくいただきます。
リードの選び方とメンテナンス方法でも一部紹介しましたが、今回はリードの育て方にフォーカスして、より詳しく解説していきます。
クラリネット未経験者・初心者の方は是非試してみてくださいね。
まずは全リードを開封
まず箱を開けたら、個包装されているものであれば、全てのリードを一気に開封します。
良いリードが入っていますように!
祈りながら迷わずザクザク開けていきましょう。
この状態で1日から数日間空気にさらします。
バンドーレンのクラリネットリードを使用する場合、フランスで封をされたリードを開けたその時から、現地の湿度と日本の湿度の違いで、徐々に水分を吸収し始めます。
ヨーロッパや北海道といった湿度の低い地域では、多少かける時間が異なりますが、手順はだいたい同じです。
第1回目:リードに水分を含ませる
まずはリードに水分を含ませるため、1枚ずつクラリネットにつけて、順番に軽く吹いていきましょう。
吹く時間は1枚数分でOK。
お気に入りのフレーズでも、スケールでもサラッと吹いて、リードを確認していきましょう。
この段階で重要なのは、「聞こえ方」より「吹き心地」です。
現段階では絞り込むことが目的ではないので、今つけているそのリードがあなたにとって
- 吹き心地が良く使えそうなリード
- 吹き心地が悪く使えそうにないリード
これくらいざっくりとでいいので分けていきましょう。
初心者の場合、最初は個体差があることにも気づきにくいので、自分の呼吸量との兼ね合いをみながら、「息が入りやすいかどうか」を意識しながら絞り込んでみてください。
1枚では違いがわからなくても、例えば10枚あれば、必ず違いは見つけられるので、しっかりと意識して取り組んでみてくださいね。
1枚吹いたら、水分をきちんと拭き取ってリードケースへと戻し、後でわかりやすいように
- 吹き心地が良く使えそうなリードには○
- 吹き心地が悪く使えそうにないリードには×
と印を付けておきましょう。
全リードを一度寝かせて放置する
箱に入っているリードを全てざっと吹いて、一度水分を含ませたら、その状態で時間を置き、リードに水分を浸透させていきます。
余分な水分は拭き取ってからリードケースに入れ、箱へと戻して数日間(最低1日以上)置きましょう。
そもそもどうしてリードを寝かせるの?
リードを育てるために、なぜ数日間も寝かせるのでしょう?
それは、先ほどの手順で仕分けしてから、時間を置いたことで、リードの質が変化する可能性があるからなのです。
数日後、吹き心地が良いと思ったリードも、状態が変わっている場合もあります。
水分を含ませてから空気にさらしたことで、リードの繊維が柔らかくなるためです。
第2回目:リードの状態を確認し、絞り込んでいこう
水分を含ませてから数日間寝かせ、開封直後とは状態が変わったリード達を、チェックしていきましょう。
一度吹くことで水分を含んだリードは、大きく分けて3つの状態へと変化しますので、○をつけたものを、もう一度吹いて絞り込んでいきます。
今回も、お気に入りのフレーズやスケールをサラッと吹いて確認してみましょう。
使えそうなリード
純粋に吹き心地が良いものが該当します。
この吹き心地というものに、ルールはありません。
「あなたが吹きやすいと感じるもの」を選んで大丈夫です。
初心者の方でも、複数枚吹いていけば、吹きやすい、吹きづらい、といったリードの違いがわかるかと思います。
リードケースに書いた○を、◎にしておくと良いでしょう。
使えそうにないリード
数日経ち、中には使い物にならない、と感じるリードへと変化しているものが含まれていることがあります。
こういったリードが、良いリードになる可能性はないので、育てる必要はありません。
こちらも後でわかりやすいように、リードケースなどに×と印をつけておきましょう。
鳴りすぎるリード
水分を含み、音が鳴りすぎる状態になっていることがあります。
これは、こちらの息の量に耐えられない、コシがない状態となって、鳴りすぎてしまうリードを言います。
ここで一つ注意しなければならない事があります。
それは、この鳴りすぎるリードの中には、限りなく使えるリードに近い「使えるかもしれないリード」も含まれているということです。
なんか惜しいな…
といった感覚が残ると思います。
こういったリードは、練習用としては十分使えるリードの可能性があるので、これも分けておきましょう。
リードケースには△印を追加しておくといいでしょう。
使えそうなリードを絞り込もう
先ほど分けた「使えないリード」は避けておき、「使えそうなリード」を1枚ずつ吹いていきましょう。
第1回目での目的は「吹き心地」でしたが、今回の目的は「いいリードを選ぶ」ことです。
ざっくりと「吹き心地」だけではなく、「聞こえ方」なども意識して、しっかりと使えるリードを選定していきましょう。
注意する項目は以下の通りです。
- タンギングがしやすいか
- スタッカートがうまく発音できるか
- 高音はしっかり鳴るか
といった事にフォーカスしてみてください。
高音については、人によって出せる音域が異なると思いますので、自分がクラリネットで出せる一番高い音で、鳴りを確認してください。
慣れてきたら自分の好みやこだわりを基準に、チェック項目を増やしていくといいでしょう。
良い音だけど、なんか変……
気をつけたいのは、とても良い音が鳴るけれど、「息をもっていかれる」というリード。
良い音が鳴るだけに、つい気になってしまいますが、吹いていて苦しいリードを無理して吹くのは、良い演奏にはつながりません。
ここは絶対に頑張ってはいけないところ。
この手のリードは、鳴りすぎてしまって練習用に避けておいたものよりも、使用しにくい場合もあります。
この時点でしっかり分けてしまいましょう。
良いリードの特徴とは
良いリードというのは、なんといってもバランスがよく取れていて、
- 息が入りやすい(吹きやすい)
- 音がどの音域もまんべんなく鳴る
- 音質が良い
- 程よい抵抗がある
といった特徴があります。
息が入りやすいリード(吹きやすい)
入れた息の量が、素直にそのまま全て音になるようなイメージです。
吹きやすいリードは、クラリネットのパフォーマンスを最大限引き出してくれます。
音がどの音域もまんべんなく鳴るリード
低音から高音まで、鳴りにくい音がなく、全音域が綺麗に鳴ります。
レジスターキィを使った音域に上がっても、吹き心地が変わることなく、全ての音がバランス良く鳴る状態です。
音域ではなく、ある音が鳴りづらい場合、これはクラリネット本体に問題がある可能性があるので、メンテナンスを依頼しましょう。
初めてクラリネットをメンテナンスに出し、音色が大きく変わってビックリしている生徒をよくみかけます。
定期的なメンテナンスを心がけるのはとても重要なことです。
クラリネット奏者として、しっかり意識しましょう。
音質が良いリード
リードは一枚一枚で音質が変わってきます。音がビャービャーせず、まとまった音が出るイメージです。
経験が浅く、まだ判断がつかない場合は、自分の好みの音を探すことを意識すると、徐々にこだわりが持てるようになってきます。
ビャービャーした音が好み!なのは構いませんが、アンサンブルになると、あの人一人でビャービャーしてるね、という事になりかねないので、調和を意識することは重要です。
周りの音をちゃんと聴いて、一定の音色の中で、あなた好みの音を探していきましょう。
程よい抵抗があるリード
「吹きやすいのに抵抗がある」
慣れないうちは理解に苦しむかもしれません。
しかしたくさん経験していくことで、自分なりのいいリードの選び方が見つかっていくものです。
クラリネットリードには「自分にとって程よい抵抗」があり、「自分にとって吹きやすいリード」がある、という感覚を手に入れると、いいリードを選ぶ時、ささっとリードを絞り込む技術が身についていきます。
第3回目:使えるリードに育てていこう
気に入ったリードが見つかったからと言って、そのリードばかり吹いていてはいけません。
もちろん吹く頻度にもよりますが、リードの寿命は一般的に「1枚1ヶ月」と言われています。
箱を開け、選んでまもないリードを吹き続ければ、もっと短くなってしまう可能性があります。
それを避けるためには、良いと思ったリードを「安定した状態で」複数枚持ち、ローテーションさせるのが一番いい方法でしょう。
そのためにも、「リードを育てる」ことが必要となります。
「育てる」と言っても、特別難しいことをするわけではありません。
2回目の絞り込みで見つけた自分にとって吹きやすいリードを、できるだけ毎日、30分くらいずつ吹いて、状態を落ち着かせていきます。
それ以外の時間は、今まで吹いていたリードで練習しましょう。
この、少しずつ慣らしていくことを「育てる」と言います。
数日間、同じように繰り返したら、新しいリードも、以前からのリードと同じように吹いて大丈夫です。
「今日はこのリード」「明日はこちら」というようにローテーションさせるのもいいですし、練習を始める前に一通り吹いて、その日一番吹きやすいリードで吹くのもいいでしょう。
その場合は、毎回同じリードにならないようにだけ、気をつけて下さい。
できれば、練習が数時間に及ぶ時は、途中でリードを替えると、より長持ちします。
せっかく見つかった良いリードが、少しでも長く、いい状態で吹けるように、常に気を配り続けましょう。
リード育成マスターへの道
クラリネット未経験者・初心者は「自分の基準」がないため、いいリードを選定し、育てることは難しいかと思います。
自分の基準がない段階では
- 吹きやすい
- 吹きにくい
この2つだけは忘れずに、リードを選んでみてください。
上達していくにつれ、タンギングしやすく、うまく音が切れる等、自分の演奏基準を持てるようになります。
たくさん練習しているうちに、音色が理解できるようになり、いずれ自分に合った「リードの心地良い抵抗」を見つけられるようになります。
慣れない時は、あれこれ迷って時間がかかってしまうものですが、経験を積み、微妙なリードも容赦なくビシビシと選定していけると、時間も有効に使えるようになってきます。
自分なりのこだわりをもって、良いリードを育ててくださいね。