2人以上での演奏の質を数段上げるには
5月になった途端、初夏の陽気が続いていますね。
皆様、体調を崩されてないでしょうか。
相変わらず、スタジオでのレッスンはおあずけ状態ですが、オンラインレッスンでお元気そうな生徒さんの顔が拝見できて、とても嬉しいですし、私自身も今の生活の張りになっています。
今は望まざる生活ではありますが、大人の方であれば、在宅勤務によりなくなった通勤時間などを練習時間に充てていただいているようで、見事に皆さんが上達されていて、そちらを拝見するのも最近の楽しみです。
さて今回は、先日のオンラインレッスンでご質問のあった、「2人以上で合わせる時のコツや注意点」についてお話していこうと思います。
今まで、複数人で吹いてきて、「アンサンブルのうまい・下手って、どんなところに差があるんだろう…」と思われたことがある方も多いと思いますので、ぜひ参考にしてみて下さいね。
「アンサンブルすること」がうまい人がやっていることとは
人数は様々ですが、最近はそれぞれが演奏したものを編集して、みんなで合奏・合唱しているような動画が流行りですね。
オンラインのミーティングシステムは、かなり進歩してきているとはいえ、まだどうしても時間差(タイムラグ)が発生してしまうのが現状。
「いっせーのせ!」で演奏しても、ズレが生じます。
ですので、あのような動画は、まず最初に誰かが演奏したものをガイドに、それを見たり聴いたりしながら、自分の演奏を撮り、それを編集で合わせていく、という作り方になっています。
私はまだ動画撮影をやったことがないのですが、アンサンブルする上で一番大切なことで、根幹である「お互いに気を配る」部分で、いつもと様子が全く違うため、かなり難しいのではないかなと思います。
そんなわけで、今回の本題。
アンサンブルが上手な人は、周りに気を配れます。
「気を配る」と言っても、少し漠然としていますね。
何を気にしているかと言うと、
- ブレス
- 体の動き
- アイコンタクト
などが、主な「気にするポイント」です。
必死に自分のパートを追い、テンポだけ死守してても駄目なんですよ!
どのように気にしたら良いのか
では、1つずつ、どのように気にしていくと良いのか、考えていきましょう。
ブレス
吹奏楽やオーケストラのように、大きな編成であれば指揮者がいますが、小編成アンサンブルではそのように特定の役割を担った人はいませんので、ブレスというのは、ただ息を吸うだけではなく、タイミングを合わせるために、とても大切な意味を持ちます。
音楽の世界以外でも「息を合わせる」という言葉を使いますが、まさにそれですね。
出だしや、テンポの変わり目に、合図を出す役目を担う人に意識を向けたり、同じ動きをしている人と同時に息を吸ったりと、ブレスを合わせることによって、吹き出しのタイミングを揃えることが、楽にできるようになります。
もし、どうしても楽譜から目を離せない、などという時でも、気配や音で察することができるように、特に自分と関わりの深いパートの人に、気を向けておくといいですね。
ポイントごとに、楽譜に書き込みしておくと、より意識がしやすいでしょう。
また、曲の始まりで、全員がテンポを共有するためにも、ブレスが重要になってきます。
合図を出す立場であれば、曲の速さに合った拍で、息を吐いて吸うようにしましょう。
遅い曲なのに素早く吸ったり、速い曲なのにゆったりブレスしては、自分自身もテンポが掴めませんし、他のメンバーも迷ってしまいます。
自身が合図を出すのであれば、拍を使ったブレスをすること、また、その合図を見て入るのであれば、一緒にブレスをしてテンポを掴みましょう。
体の動き
ブレスと同様に、各自の体の動きを気にしましょう。
わかりやすい点では、まず曲の出だし。
アンサンブルの際は、ベルの先が指揮棒と同じような意味を持ちます。
かと言って、大げさにやりすぎては、演奏に影響が出てしまいますので、合図を出す時にはごく自然な動きを心がけるといいですね。
例えば、曲の始めに息を吐く時にはベルを少し下げ、吸う時に軽く上げると、周囲の人はブレスと共にその動きを確認して、合わせて出ることができます。
また、曲の終わりは、指揮者が指揮棒を回して音楽を止めるように、ベルを回して音楽を締めます。
他の人が合図を出す時は、その動きを必ず見て、極力動きを合わせましょう。
できれば、しっかりお相手の目を見ていただけるとより良いですが、「視界に入っている」程度でも構いません。
特に大切なポイントでは、他の人の動きを目で確認し、場合によってはこれも気配で察することができると、アンサンブルの精度が、一気に向上します。
ちょっとしたタイミングを取るための体の動きも、キャッチできるといいですね。
アイコンタクト
アンサンブル演奏中に、誰かと目が合ったことはありますか?
「ここぞ!」という時は、お互いに相手の目を見ることができると、「一緒に演奏ができる」ようになります。
息を合わせ、動きを揃えるためには、やはり目を合わせるのが一番です。
楽譜を見たい気持ちもわかりますので、ずっと合わせておく必要はありません。
あくまで「ここぞ!」の部分で、アイコンタクトしましょう。
奏者全員がその曲をきちんと理解していれば、大切なポイントで自然に目が合うはずです。
「ここでは、あなたを見るね」なんて、打ち合わせは必要ありません。
また、「目を合わせる」と書いてきましたが、自分が気を向けたパートの人が、気にかける相手が1人ではない場合もあるので、必ずしも目が合わないかもしれません。
そこは気にしなくて大丈夫です。
ただ、しっかり目・顔は見るようにしましょう。
アンテナをきちんと張ろう
アンサンブルで一番大切なのは、常に周りを気にし続けることです。
そしてそれは、一方通行ではなく、双方向でなければいけません。
一緒に演奏している人の、ちょっとした気配、動き、ブレスの音など、自分のパートを吹くこと以外に気にすることの方が、何倍も多いのがアンサンブルです。
ですので、集中してアンサンブルすると、相当疲れます。
自分のパートをしっかり演奏するのは当然のこと、皆で一つの音楽を作り上げるために、ただ楽器を吹くだけではないところにしっかり気を回して、より精度の高いアンサンブルを目指していきましょう。