クラリネットでラからシへ上手に進むための指練習
クラリネットの演奏で難しい「真ん中のラからシへの運指」ですが、まずうまくできない理由を知ることが大切です。
今回は、その中でも大きなウェイトを占める、左手の効率的な使い方を身につける練習方法をお伝えします。
ラからシへ進む前の導入練習
クラリネットにおける「ラ」から「シ」への進行で、一番鍵になるのは左手の人差し指の形と動かし方です。
しかし、「ラ(指1本)」→「シ(すべての指)」の練習をパタパタとやっても、なかなか左手人差し指だけに集中するのは難しくなりますので、人差し指だけの練習から始めましょう。
まずは、「ファ♯」⇔「ラ」です。
もし可能であれば、鏡を用意して、左手が映るようにセットします。
部分練習をする時に、必ず気をつけるのはゆっくり大きな音で吹くことでしたね。
ですので、「ファ♯ーーーラーーーファ♯ーーー」というふうに、全神経が指の動きに集中できる速さで行います。
「ファ♯ラファ♯ラファ♯ラ…」とやっても意味がありません。
ただ繰り返すだけの時間にならないようにしましょう。
この練習の一番の目的は、左手人差し指が無駄なく動き、また、他の指も影響されないことです。
では、具体的に指の形を見ていきましょう。
身につけるべき指の形
「ファ♯」の時には、このような指の形を意識しましょう。
「ラ」はこうです。
どちらの時も、使っていない指が、自分が担当するホールから離れることなく、人差し指が動いていることの影響を受けないことも大切です。
2枚の写真を並べてみましょう。
人差し指以外、ほとんど変わっていませんね。
そして、人差し指は、ほんの少し角度が違います。
これは、ホール(指穴)及びキーを押さえている人差し指の場所が違うことを意味します。
この人差し指以外は動かない状態が、クラリネットで「ラ」から「シ」へスムーズに進むための運指には必須です。
先述の通り、ゆっくり大きな音で、鏡を見ながら丁寧に練習を繰り返しましょう。
この練習のポイント
丁寧に練習はしますが、左手人差し指をゆっくりぬるっと動かすようにすると、音がパッと切り替わらない原因になります。
人差し指を持ち上げるように動かしてはいけませんが、指の角度の切り替えは素早く、思い切ってやりましょう。
指の形さえ気をつけられていれば大丈夫です。
練習時に気をつけるべきこと
この練習の際に、陥りやすい例も覚えておきましょう。
まず、こちらの写真です。
ぱっと見た感じ、そこまで駄目なようには見えませんが、注目すべきは親指です。
楽器を支えてしまっていますね。
この練習の時に限らず、左手親指を使わない音(「ファ♯」~「ラ」の4音)を吹く時に、このように親指で楽器を押さえている人をよく見ますが、そのあとに親指を使う音に進まねばいけない時に、パッと親指を離すことでクラリネットのバランスが崩れてしまったり、指の動きが間に合わなかったりしますので、余計なくせをつけないようにしましょう。
もう一点、「ファ♯からラに、指の角度を変えて進む」「素早く切り替える」にこだわった結果、
手首を返してしまっては駄目です。
その2つに関しては、手首ごと動かすことでクリアできますが、あくまでこの「ファ♯」⇔「ラ」の練習は「ラからシにスムーズに進むため」の予備練習です。
先程の親指で支えること然り、「シ」に進むのに邪魔になるくせを、この部分練習でつけてしまわないように、くれぐれも気をつけて下さい。
上手にできたら音域を広げていく
「ファ♯」⇔「ラ」が上手にできるようになったら、「ミ」⇔「ラ」、「レ」⇔「ラ」、「ド」⇔「ラ」というふうに、徐々に使う指を増やしていきます。
その都度
- 指がばらついていないか
- 無駄な動きをしていないか
- 指を動かすのに力が入っていないか
をチェックしながら進むことが大事です。
少しずつ音を下げていき最低音まで行ったら、この指練習は終了です。
いよいよ「ラ」から「シ」へ進んでみましょう。
ここまでの練習を細やかに繰り返していれば、驚くほどスムーズに指が動かせるようになっているはずです。
また、大きな音で練習をしていれば、「息が足りなくてシが鳴らない」という事態にもならないので、スラーもきれいにかかります。
遠回りに見えることが実は近道
クラリネットを吹いていく上で心がけた方がいいのは『急がば回れ』です。
「ラからシができないから、ラからシをひたすらやる」のではなく、今回ご説明したように、もっともっと手前の、根っこの部分を探し出して練習していく習慣をつけましょう。
遠回りに見えても、きちんと道筋ができるので、しっかりとした運指が身につき、効果を感じることができます。
細やかな練習を積み重ねて、上達に繋げていきましょう。