左手親指レジスターキーの押さえ方
暦の上では、だいぶ前に秋になりました。
しかし、スコールのような急な雷雨があったり、まだまだ日差しがきつかったり、まるで南国で過ごしているような気分になりますね。
クランポンの軽量ケースを使われている方は、強い雨だと中に染み込んでしまう可能性もありますので、ケースを覆えるサイズのビニールを携帯したり、いざという時にケースごとしまえるかばんを持つようにして、ケースに直接雨がかからないように対策をしておきましょう。
ちなみに私は、防水の布で雨天時用のケースカバーを作ってもらって、それを持ち歩くようにしています。
さて、先日のレッスンで「どうしても下の音域(レジスターキーを使わない音域)から、上の音域にうまく上がれない」というご相談をいただきました。
こちらの音域の行き来において、運指面での大きな原因は、左手人差し指の使い方にあります。
しかし、それだけではありません。
実は、左手親指の使い方やレジスターキーの押さえ方が、重要な鍵を握っているのです。
今回は、意外と気にしていない方が多い、左手親指に注目してみたいと思います。
左手親指は実は複雑な動きをしている
こちらの譜例、そんなに難しくなさそうに見えて、とても嫌な指なのですが、おわかりになりますか?
「ファ」では、左手親指がトーンホール(指穴)のみを押さえていて、「シ♭」ではレジスターキーのみ、最後の「レ」ではトーンホールもレジスターキーも押さえる、というように、一音ごとに左手親指の使い方が変わるのです。
トーンホールのみでなく、他のキーも担当する指に関しては、大きな移動なくトーンホールもキーも押さえられるように準備しておかなければなりません。
左手親指も、その1つ。
他の指に関しては、鏡でチェックしながら吹くことができますが、左手親指はそういうわけにいかないのが、厄介なところですね。
かと言って、放っておくわけにもいきませんので、この機会にしっかり「左手親指の正しい位置」を知って、どの音域でも安定して吹けるようにしていきましょう。
自分の左手親指の状態を知ろう
まずは、いつも通り構えてみて、左手親指がどうなっているかを確認してみましょう。
もし、このような押さえ方であれば、修正の必要があります。
まず向かって右側の写真は、楽器に対して親指がまっすぐすぎます。
この状態でレジスターキーを押さえようとすると、指の腹がトーンホールから浮いてしまい、音が出ない原因になります。
また、左側の写真は、楽器と親指の角度はいいのですが、トーンホールを押さえた時点でレジスターキーに触れていないため、レジスターキーを押さえるために、この位置から上にスライドさせなくてはなりません。
使うために上にスライドさせた親指は、使わない時にまた下にスライドさせようとしてしまいます。
スライドさせる作業は、はっきり言って無駄な動きですし、急いでいる時は動きが大きくなってしまい、余分な隙間ができる可能性が出てきますので、これもまた音が出ない原因になってしまいます。
トーンホールを押さえている左手親指を確認したら、今度は先程の「シ♭」の運指をしてみましょう。
もしこんな風に、指が直角に近く曲がってしまっていたら、これも無駄な動きです。
左手親指が担当しているトーンホールのリングを押さえまいとして、このように離れてしまっているのだと思いますが、その分トーンホールから離れてしまうので、スムーズな音の行き来を妨げます。
正しい左手親指の使い方とは
自身の押さえ方を確認して、「もしかして、今までうまく上の音域に行けなかったのは、左手親指のせいだったの…?」と思ったら、正しい左手親指の使い方に変えていきましょう。
まず、基本的な左手親指の位置・角度はこちらです。
楽器に対して、左手親指は斜めにし、レジスターキーに軽く触れておきます。
レジスターキーを使用する時は、「押さえる」というよりも「軽く左手親指を左上方向に傾ける」ような感覚で大丈夫です。
この位置に置いておけば、レジスターキーを使っていても使っていなくても、左手親指の腹でトーンホールを確実にふさげるので、「レジスターキーを使おうとしたら、うっかり指が浮いてしまって音が途切れた」というようなことが避けられます。
また、レジスターキーのみを押さえる時には、トーンホールのリングは押さえないようにしますが、大きく離れないようにしましょう。
リングが上がってさえいれば、触れていても構わないので、動かし方はこの程度で充分です。
左手親指がぐっと曲がったりはしていませんね。
これくらいしか左手親指が動いていなければ、簡単にトーンホールに指の腹が戻れるので、先程の譜例の「シ♭」→「レ」も、全く問題なく吹けるはずです。
吹きながら鏡では見られないので、吹かずに自分の目で確認しながら、左手親指の正しい使い方の感覚を、しっかり覚え込ませていきましょう。
慣れてきたら、音を出して、音の移り変わりで途切れたりしないかの確認をすることも、もちろんやって下さいね。
見えないからこそ丁寧に
両手の人差し指もそうですが、左手親指の使い方は、スムーズな演奏ができるかどうかに直結します。
ただ、何度も書いてきたように、左手親指を鏡に映して確認することは無理ですので、指の感覚が大切になります。
音を出し始める時に、左手親指がどんな状態であるかや、レジスターキーで上がるロングトーン(「ミ」→「シ」のパターン)をやる時などにも、親指をずりずりとスライドさせたりしていないか、気を回しながら、丁寧に練習しましょう。
左手親指の正しい位置と角度が身につくと、今まで引っかかっていた音も、すんなり鳴らせるようになるので、演奏がもっと楽しくなります。
焦らずに、正しい状態を身につけて下さいね。