吹奏楽部のクラリネット奏者が陥りがちなくせとは
東京クラリネット教室の生徒さんには、学生の頃に吹奏楽部に属していた方や、現役の吹奏楽部員が多くいます。
また、学校に出向いて、外部講師として吹奏楽部のクラリネットパートのレッスンをすることもあるのですが、かなりの割合で、吹奏楽をやっている(やっていた)方に見られる、共通のくせというものがあります。
「くせ」と言うからには、あまりいいことではありません。
今回は、どのようなくせなのか、また、その影響について見ていきましょう。
吹奏楽で演奏しているからこそのくせ
吹奏楽のクラリネット奏者に多く見られるくせというのは、
- 顔の角度
- 目の使い方
に表れます。
パートの人数や全体の編成によっても異なりますが、吹奏楽ではほとんどの場合、クラリネットは1列目から3列目あたりに座っていますね。
本来、顔はまっすぐ、目線だけを下げて楽譜を追い、上の方の視野で指揮者の動きを見て、肝心な部分では目を上げて指揮を見る、というのが理想です。
ところが、ホールや体育館など、広い場所での演奏を除くと、特に1列目の人は指揮者とかなり距離が近いため、知らず知らずのうちに
このように上目遣いになっている方が、とても多いのです。
狭さゆえに、譜面台と顔が平行になり(ということは、あごをかなり引いています)、極端に上目遣いで指揮を見ることが当たり前になっている、というわけです。
上目遣いの何がいけないのか
「指揮も楽譜も見られるなら、上目遣いだって別に気にしなくていいんじゃない?」と思われるかもしれませんが、実はそうも言っていられません。
クラリネットを吹くにあたり、とても大切なのが顔に対しての楽器の角度です。
マウスピースをくわえる時に、噛むことは決してしませんが、下の歯を唇越しにリードに押し当てる圧は、とても大切です。
歯並びなど、個人個人で差が出る要素はあるのですが、概ね
これくらいの角度が、リードに対して適切な圧がかかり、良い音を出すのに適した角度です。
一方、顔を下げて上目遣いで吹く時に、楽器も下げて構えるのであれば、角度についてそこまで気にしなくていいのですが、実際は
このように、楽器の位置はあまり変わらずに構えるため、顔と楽器の角度が開いてしまいます。
この角度を維持したまま、顔を本来の位置に戻すと、楽器をかなり上げた状態で構えていることになり、リードに必要な圧がかかっていないことがわかります。
また、あごを引いて声を出してみると、自然な息の流れが、若干ではありますが妨げられるはずです。
息が自然に出にくいということは、余計な力みにも繋がります。
力みは、クラリネット演奏の大敵ですよね。
ですので、あごを引き、上目遣いで指揮を見ることは、避けた方が良い、ということになります。
演奏の質を上げるために
合奏では特に、ついつい一生懸命になると、上目遣いになってしまう気持ちは、とてもよくわかります。
それだけでなく、最前列に座っていると、譜面台や指揮者との距離も近いため、やろうとしていなくても、そのような姿勢になってしまうのも、仕方ないとは思います。
しかし、クラリネット演奏において大切な顔と楽器の角度、息の自然な流れをさておいて、良い音色で良い演奏をすることは叶いません。
また、良い姿勢は「素敵な演奏をしてくれそう」という印象を与える、視覚的な効果もあります。
演奏のたび、少しずつ気をつけるだけで、顔の角度は矯正できます。
顔と譜面台が平行にならないように、指揮者を上目遣いで見上げないように、慣れるまではこまめに意識をして、良くないくせとはサヨナラしましょう。