クラリネットが抜けない時の対処方法
クラリネットは5つのパーツからできていますが、練習後に「抜けなくなった!」という経験はありませんか。
「きちんとグリスも塗ってるのに、なんで…」と思われるかもしれませんが、抜けない原因は、実はそこではありません。
クラリネットのパーツ同士が抜けなくなってしまう理由と、対処方法を正しく知って、今後焦らなくて済むようにしておきましょう。
なぜクラリネットが抜けなくなるの?
まずは、クラリネットが抜けなくなる原因ですが、ほとんどの場合は木の膨張のせいです。
「あんなに堅い木が、膨張するの!?」と思われるかもしれませんね。
私もそう思っていて、クラリネットが抜けにくくなるのは、コルクが膨張するせいだと思い込んでいました。
コルクが原因のこともあるにはあるのですが、コルク自体に元々弾力がありますので、全く抜けないようなことはなく、微動だにしないような時は、ほぼ確実に木の膨張です。
そのような理由から、マウスピースが抜けなくなったり、いわゆるプラ管が抜けなくなることは、限りなく可能性が低くなります。
コルクが原因になる場合
例外的に、コルクが原因になりやすいのは、下管とベルを組み立てた状態のまましまう、ダブルケースを使用している場合です。
グリスが固まってしまうと、そのせいで下管のコルクとベルが張りついた状態になってしまうため、動かなくなってしまいます。
もし、ダブルケースにA管しかしまってないのであれば、完全に抜いて、ベルはB♭管の方に入れておけば安心ですし、2本ともしまってある時は、ほんの少しだけ(1mmくらい)下管とベルを抜いておけば、組み立てた状態でしまっていても、抜けなくなることは避けられます。
なぜ木が膨張するの?
クラリネット本体の木が膨張してしまうのは、水分のせいです。
まず考えられるのは、演奏している際の結露による水分。
楽器を片づける時に、各ジョイント部分に水が溜まっている時がありますよね?
要はあの水が木に染み込んでしまうことで、膨張が引き起こされます。
ですので、水が溜まりやすい、樽(バレル)と上管部分や上管と下管のジョイントが、抜けなくなる確率が高くなります。
また、夏場など湿度が高い時にも膨張しやすくなりますので、要注意です。
そしてかなりの盲点が、ゆるめのグリス。
水分が多めのグリスだと、木に染み込んでしまいます。
「すべりを良くするために」と塗ったグリスのせいで、木が膨張して抜けなくなってしまうなんて、恐ろしい話ですね。
木の膨張を避けるためには
膨張してしまった木が元に戻るには、かなりの時間がかかりますので、膨らんでしまわないように気を遣う必要があります。
まずは、スワブをこまめに通しましょう。
膨張を避けるためだけではなく、スワブを使って頻繁に掃除をすることは、クラリネットを良い状態に維持するために欠かせないことです。
また、数回に一回は樽(バレル)を抜いて、上管の上の部分に水が溜まっていないかチェックしましょう。
なおこの部分は、グリスがついていることがありますので、スワブではなく、ティッシュやガーゼなどで拭き取るようにしましょう。(スワブにグリスがついてしまうと、管内を汚してしまうことに繋がります)
上管のこの部分が濡れている時は、上管と下管のジョイントにも水が溜まっているかもしれませんので、一緒に拭き取っておくと、より安心ですね。
抜けなくなってしまった時は
どんなに気を遣っていても、抜けなくなってしまう時はあります。
そのような時は、下記の方法を実践しましょう。
- 少しずつ傾ける
- しばらく待つ
- 楽器屋さんに持っていく
少しずつ傾ける
「回しながら抜こうとしても、全く動かない!!」という時でも、ほんの少し傾けることができるようでしたら、抜ける余地があります。
このように、左右に細かく傾けることを繰り返しながら、樽(バレル)を徐々に上に移動させてみましょう。
動かなくなっている理由は、上管の上部のごくわずかな部分が、樽(バレル)にピタッとはまってしまっているからなので、この方法で動かせるようであれば、自力で抜くことができます。
しばらく待つ
傾けることすらできなければ、しばらくそのままの状態で、膨張していたものが元に戻るのを待ちましょう。
時間の経過で、膨張が落ち着けば、抜けるようになります。
その際、早く冷やしたいからと、クーラーに当てたりすることは絶対にやっては駄目です。
木の膨張が落ち着くどころか、急激な温度変化と湿度変化で、割れてしまうことに繋がります。
布などをかけたり、軽くくるんだりして、危なくないところに置いておきましょう。
なお、抜けたあとは、必ず楽器屋さんに持っていって下さい。
一度抜けなくなったということは、再び同じことが起きるからです。
「あー、抜けて良かった」と安心して、そのままの状態を放置することがないようにしましょう。
楽器屋さんに持っていく
傾きもせず、時間を置いても無理な時は、楽器屋さんに持っていくしかありません。
無理に抜こうとすれば、楽器を傷める以上に、自分を傷めることになります。
そんなことで、指や手を傷めてしまって、クラリネットが吹けなくなってしまっては、本末転倒ですね。
安全に持ち運べる方法で、もちろんケースもちゃんと持って、楽器屋さんに行きましょう。
慣れている楽器屋さんであれば、ただ抜くだけでなく、同じことが起きないように、きちんと調整してくれます。
クランポンの楽器は特に注意
ビュッフェ・クランポンの楽器は、元々合わせがぴったりめに作ってあります。
フランスの湿度は日本に比べて低いため、膨張の心配がほとんどないからです。
そのため、フランスでは大丈夫な楽器も、日本に来た途端抜けなくなる楽器に変身してしまうことがあるそうです。
少しでも「抜き差しがきついかも」と思った時点で、信頼できる楽器屋さんに相談するようにしましょう。
ジョイントのテカりは抜けなくなる前兆
もし、自分の楽器をよく見て、ジョイント部分がこすれてテカりが出ていたら、そこが極端にもう一つのパーツに当たっている、ということです。
ごくごくわずかでも、そのような箇所があれば、もう抜けなくなる可能性があります。
ある日急に楽器が抜けなくなって焦ることのないよう、組み立て・片づけの時にきつく感じることはないか気にかけて、何気ない扱いをしないことが大切です。
また、演奏時はこまめな掃除を心がけて、膨張を防ぎましょう。
万一の時は、今回お話したことを思い出して、冷静に対処して下さいね。