緊急事態!クラリネットのバネが折れた時の応急処置
連休ど真ん中の先日、クラリネットを始めたばかりの生徒さんに、組み立て方をお伝えしようとケースから自分の楽器の上管を出したところ、なんだか違和感…
「ん?なんだこれ。キーが曲がった??」
そんな手荒なことはしていないし、長年演奏してきて、今さらキーを曲げてしまうような迂闊なことはしないはず。
この違和感は一体…!?
キーを支えるバネが折れた!
原因は、この赤丸内にあるはずのバネがぽっきり折れてしまっていたことでした。
本来は、
このように、平らな板状のバネが、溝の中に納まっていて、トリルキーの一番下のキーが穴をふさぐ機構になっているのですが、折れて支えがなくなってしまっているので、上の写真ではキーが下がって穴が全開になってしまっています。
これが、キーが曲がってしまったような気がした理由でした。
いつ、どのタイミングで折れたのか定かではないのですが、それはそれは静かに、気づかぬうちに折れていました。
ふと足元を見れば、折れたバネが落ちていて、切なさアップです。
長く使っているクラリネットなので、折れたのは経年劣化だと思われます。
3・4ヵ月に1回は調整に出していますが、こういう部分の急な故障は、仕方がないことですね。
このままでは音が出ない
しかし、毎日レッスンを行っていますので、仕方ないとも言っていられません。
本来ふさがっていないといけないところが開いてしまっているので、今のままでは音が出ないのです。
ところが、運悪く連休中日の出来事。
行きつけの修理工房は、火曜日まで開きません。
困り果てた私、ふと思い出しましたよ。
数年間ケースに忍ばせ、すっかり忘れていたもののことを。
“これ”を使います。
コルクを使ったクラリネットの応急処置
“これ”の正体は、以前、クラリネットを修理に出した時に職人さんがキーの固定に使っていたコルクです。
修理に出した後、返ってきた楽器を見てみると、このコルクをキーとキーポスト(キーを支えている部分)に挟み込んでキーを固定してあり、緊急時に使えるかも、と一つ手元に残しておいたのです。
このコルクを挟むことによって、キーが本来の位置に戻り、きちんと穴がふさがる、というわけです。
もちろん、穴のふさがり方は、職人さんが細心の注意を払って調整して下さっているものなので、それと比べてしまうと、鳴りは当然良くありません。
あくまで「一時しのぎの方法」です。
応急処置の注意点
この応急処置を行う時には、注意せねばならないことがあります。
こちらの赤丸部分は、キーと連動していて、上下します。
ですので、この部分にコルクを差し込んでしまうと、適切な動きを妨げてしまいますので、キーとキーポストの間に差し込むようにしましょう。
また、あまりぎゅうぎゅうとコルクを押し込んでしまうと、パッドがつぶれてしまったり、キーのゆがみに繋がる可能性がありますので、決して無理な力はかけないようにして下さい。
一刻も早くプロのもとへ
これで、とりあえず音は出るようになりました。
右手の人差し指に当たってしまうので、少し吹きにくさはありますが、音が出ないことに比べれば、充分な応急処置です。
他の箇所でバネが外れてしまった・折れてしまった時などにも使えるかと思いますので、万一の時は注意点なども応用して対処してみて下さい。
備えあれば憂いなし
今回はレッスンの前でしたが、もしバネの寿命がコンサートの演奏直前に切れていたことを想像すると、恐怖です……。
普段から緊急時を意識するのが重要です。
コルクは困った時に都合よく手元にある物ではないので、いざと言う時には消しゴムなどを同じ形に切って使ってもいいかもしれませんね。
しかし重ねてになりますが、今回の方法はあくまで一時しのぎ・応急処置です。
何か異常が起きた時には、速やかにプロの手にお任せしましょう。
私も早速楽器屋さんに行ってきます!
2019.01.16追記
お忙しい楽器屋さんに「緊急事態なんです…!」と泣きを入れて、急いで直していただきました。
なんと15分という時間で直して下さって、
無事にバネ復活です。
やっぱり、きちんとした状態の楽器は鳴りが違いますね。
思わぬ経験をしましたが、いろいろと勉強になりました。
「楽器は大切に!緊急時には、速やかに楽器屋さんへ!!」