クラリネットのきれいな片づけ方と注意点
クラリネットの組み立て方・リードのセッティングも大切ですが、きちんと掃除して片づけることも、木でできているクラリネットにはとても重要なんです。
きれいに掃除をしているかが、楽器の良い状態を維持することに直結しますので、今回はクラリネットを吹いたあとの掃除とお手入れの仕方について、ご説明します。
管体の掃除用布・スワブ
クラリネットの掃除には、スワブという布を使います。
スワブには様々な形のものがありますが、広く使われているのは、四角い布から対角線上に長いひもが出ていて、その先におもりが入っているタイプです。
メーカーによって、両方にひもが伸びているもの、片方だけのものとあります。
両方に伸びているものは、万一楽器の中にスワブが詰まってしまった時に、元の方向に引き抜くために考えられたそうです。
どちらを選ぶかは、好みでいいでしょう。
また、素材もいろいろありますが、マイクロファイバーでできているものが、現在の主流です。
これは、滑りも良く、管体に詰まりにくいのでおすすめです。
では、順を追って片づけ方を見ていきましょう。
リードもきちんと水分を取る
今回は、以前お伝えした組み立て方と逆順で進めていきますので、まずリードを外します。
その際、ぐるぐるとたくさんリガチャーのネジをゆるめると、次に使う時にその分締めないといけないので、手前に半回転くらいさせるだけで大丈夫です。
ちょっとだけゆるめたら、右手でリードを押さえながら、左手でリガチャーを持ち上げると、簡単に外れます。
リードを外したら、必ずスワブでリードの水分を取りましょう。
よくそのままケースにしまっている人を見かけますが、リードは植物でできています。
濡れたまましまってしまうと、水で濡れた紙がよれよれになってしまうように、リードの先端部分が波打ってしまうので、水分を拭き取る必要があります。
リードを傷つけないように、スワブで挟み込んで、滑らせるようにして拭きましょう。
2・3回繰り返して水分を取ったら、ケースにしまいます。
マウスピースの掃除
次に、マウスピースを外します。
組み立て方の説明の時にお伝えしたように、入れる時・外す時は必ず一番近いパーツ同士を持つようにして下さい。
ここでは、マウスピースとたるですね。
マウスピースは直接くわえる部分ですし、かなりの水滴がつきます。
この水滴をスワブで取るのですが、普通のサイズのスワブを使う場合は、抜き切らないようにします。
まず、マウスピースの太い方(下部)から、スワブのおもりを通します。
ここで、そのままシュパッとスワブを抜いてしまいたいところですが、マウスピースはとても繊細。
スワブによって擦れてしまい、中が少しずつ摩耗してしまいます。
(ひもを通すだけでも駄目、と言う方もいます)
摩耗してしまうと、職人さんが目に見えるか見えないかの違いにこだわって削ったマウスピースの形が徐々に変わってしまうので、気づかぬうちに吹き心地も変わってしまう、というわけです。
ですので、この写真くらいまでスワブを通したら、布の部分を持って、元の方向に少し引っ張ります。
その後、またひもを少し引っ張って…と、軽く何往復かさせたら、最終的に布を引っ張って、ひもの部分を取り出します。
先程も書いたように、スワブは抜き切らないで下さいね。
マウスピース専用スワブの活用
もし、このような
マウスピース専用のスワブを持っていれば、こちらはごく柔らかい素材でできていますので、普通に通して大丈夫です。
その際も、
必ずマウスピースの太い方から、スワブを通しましょう。
ちなみに私は、普通のスワブしか持っていないので、吹き込み口の部分の水分と、たるに入れるジョイント内部の水分を取るだけで、基本的にはスワブは通していません。
ごくたまに、気になったら通すようにしています。
マウスピースをしまう時の一工夫
マウスピースをしまう時は、割れてしまったりして使えなくなったリードをつけてしまうようにするといいですよ。(つけ方は、なんとなくで大丈夫です)
リードをつけていないと、リガチャーの緩めすぎなどで、キャップの上部裏側がマウスピースの上部に接触し、摩耗や欠けたりすることもごくまれにありますが、そのような事態を防げます。
これは余談になりますが、多くの方が使っているヴァンドレンのマウスピースは、銀を変色させる成分を含んでいるそうで、管体と一緒にケースに入れると、キーの色が茶色く変わってしまいます。
マウスピース専用のケースに入れたり、布にくるんでポーチに入れたり、また、少しかさばりますが、買った時の箱に入れるなどして、別に持つようにしましょう。
管体の水分を取り除く
さて、マウスピースをきれいにしたら、管体にスワブを通します。
ここで、一点注意していただきたいことがあります。
管体を上から覗いてみると
このような出っ張りがあります。
レジスターキーで開閉している穴についているパーツです。
このパーツにはスワブがとても引っかかりやすいんです。
スワブをベル側から通して、この出っ張りに引っかかって詰まってしまうと、自分でどうにかするのはほぼ無理です。
詰まり防止用に、両方にひもが伸びているスワブでも、詰まり方によっては、ひもが役に立たないこともあります。
たたんである状態から、いきなり通そうとしてしまうと、かなりの高確率で詰まりますので、通す前には、スワブを軽く広げてから通しましょう。
詰まりの防止策として、たる側(楽器上部)から通すのも有効です。
私は、クラリネットを始めたばかりの方には、この通し方をおすすめしています。
こちらからなら、先程の出っ張りからの距離も近いので、万一引っかかってしまっても、布を引っ張って元に戻すことができます。
その際楽器を立てて通すと、これまた詰まりやすくなりますので、慣れるまでは写真のように少し横にして通すと、すんなり通すことができます。
また、通していて何か抵抗を感じるような時は、無理に引っ張らないようにしましょう。
無理をすると、後悔することになってしまいます。
管体にも、2・3回通しましょう。
順番に分解していく
全体にスワブを通したら、分解していきます。
その前に、まずたるを上から覗いてみましょう。
もしそこに水分が溜まっていたら、
このようにスワブで拭き取ります。
スワブ越しに、指でぐりぐりとすると、きれいに取れます。
その時に、もしジョイント部分にグリスがついているようであれば、まずティッシュなどで取り除いて下さい。
スワブで拭いてしまうと、管体内部にスワブを通した時に、楽器の中にグリスがついてしまいます。
たるを外したら逆さにして、上管とのジョイント部分も覗いて、濡れていれば水分を取りましょう。
その後
上管ジョイント表面(赤丸部分)の水分も忘れずに拭きます。
また、青丸部分にグリスが溜まったりしていないか、確認します。
コルクについているグリスは、とても重要ですが、このような部分に溜まってしまったものは、ただのゴミです。
これも、ティッシュできれいに拭き取りましょう。
組み立て・片づけ共通の注意点
上管と下管を抜く時は、組み立ての時と同様
上管のキーを押さえて、赤丸内のパーツを持ち上げます。
また、
下管のキー(赤丸)は触らないようにしましょう。
片づけに関しては、組み立ての時のようにジョイント部分がぶつかって、コルクがはがれてしまうようなことはありませんが、摩耗の原因になりますので、必ず守って下さいね。
キーを曲げないために
それと、この上管・下管の分解の際に、最も気をつけていただきたいことがあります。
赤丸内のトリルキーと、青丸内の左手小指のキーは、ほぼ同じ高さについています。
ですので、何も考えずに勢いよく回すと、噛み合ってしまい、取れなくなったり、キーが変形したりしてしまいます。
- まず、それぞれが離れる方向(上管は向かって左・下管は右)に回すこと
- そっと、少しずつ動かすこと
に気をつけて、抜くようにして下さい。
その間ずっと、上管のキーは押しっぱなし、下管のキーは触らないようにしましょう。
プラスアルファの掃除
先程と同じように、ジョイント部分の水分も拭き取りながら、全て分解したら、とりあえずは完了です。
しかし、演奏中に、あまりこまめにスワブを通すことができなかった時など、ホールに水が溜まってしまっていることがあります。
その水は、スワブでは取り除くことができませんので、下記のようにして、きれいにしましょう。
上管下部に右手のひらを当て、下から空気が抜けるのを防ぎます。(私は、人差し指付け根の少し膨らんでいる部分を当てています)
左手で普段楽器を吹く時のようにトーンホール(指穴)を押さえたら、上部から息を吹き込みます。
当然、出口をふさいでいるので、空気はどこからも抜けません。
その状態で、キーを瞬間的に開けることを繰り返すと、そのホールから空気が出て、中に溜まっている水も一緒に外に出ます。
(この写真では、管体サイドについているトリルキーを押さえています)
もし水が出たら、出てきた水をスワブで拭き取り、もう一度内部にもスワブを通しましょう。
また、水が出たホールに、
クリーニングペーパーを挟んで、パッドについた水分をしっかり取ることも大切です。
下管に関しては、このような掃除方法はありませんので、もし下管のホールから水が出てきているのに気づいたら、クリーニングペーパーで取って下さい。
ただ、下管のホールからも水が出るようでは、演奏中に掃除をしなさすぎです。
もう少しスワブを通す回数を増やしましょう。
きれいに磨いて終了
これで、演奏後の掃除は終わりです。
最後に
キー磨き用の布で、指紋を拭き取ればお手入れも完了です。
スワブをしまう場所に注意!
そして最後の注意点。
吹奏楽部に教えに行くと、ベルの中に小さくたたんだスワブを突っ込んで、ケースをパタン…という光景をよく見ますが、ベルはスワブ入れではありません。
せっかく、細かに水分を取り除いたのに、水分を含んでいる布をケースに入れてしまっては、なんの意味もなくなってしまいます。
むしろ、管体や、薄い紙とフェルトだったり、革でできているパッドにも、水分を与えることになるわけです。
水分を含んで膨らんだものは、乾くと当然縮みます。
均等に縮んでくれればいいのですが、そんなにうまくいかないことは、想像に難くないですね。
パッドはほんの少しでも変形すると、均等にホールを閉めることができなくなり、吹きにくさに繋がります。
ひどくなれば音も鳴らなくなりますので、水分は大敵。
ですから、先程の『プラスアルファの掃除』までやる必要があるわけです。
管体から取り除いた水分を、再び不用意に与えてしまうようなことは、絶対にやめましょう。
自分のやり方を見つけよう
片づけも組み立てと同じで、注意すべき点だけ注意すれば、「絶対にこの順番でやらないといけない」という決まりはありません。
管楽器の中で、一番と言っていいほど細かく分解して、ケースにしまわなければいけないクラリネット。
自分なりの手順を見つけて、きれいに素早く片づけられるようにしていきましょう。