クラリネット上達のために自分の得意を見極めよう
自分は基礎練習が得意なのか、曲が得意なのか、ということを考えたことがありますか?
日々レッスンをしていると、自分の得意なことを知っている方は、練習のコツを押さえることができるので、どんどんクラリネット演奏が上達されていくなと感じます。
今回は、正しく自分のタイプを知って、効率の良い練習ができるようにする方法と、さらには「どちらも得意」と言える状態を目指すにはどのようにすれば良いのかを考えていきましょう。
より息が入るのは基礎練習か、曲練習か
基礎練習(特にロングトーン)は、演奏における全ての要素を含んでいると言っても、過言ではありません。
また、曲などの練習に入る前のウォーミングアップにもなりますし、その日の状態を知ることもできますので、東京クラリネット教室のレッスンでは、「レッスン前に練習してきました」「今日はいきなり曲がいいです」という方々を除いて、まずロングトーンをしていただいています。
その後に、教本や曲などの練習に入るのですが、ほとんどの方が
- 曲よりも基礎練習の方が得意
- 基礎練習より曲などの方が得意
の2パターンに分けられます。
ここでいう「得意」は、より息をしっかり入れて、楽器を鳴らせることだと思って下さい。
もちろん、どちらも差のない演奏をされる方もいますが、それはなかなか難しいことです。
息が入らない練習を漫然と積み重ねるよりも、楽にたくさんの息を入れられる練習を多く行えば、自然な吹き方が身につきやすくなりますので、自分のタイプを見極めることが大切、ということになります。
では、自分のタイプを知るために、チェックするポイントを見ていきましょう。
好き嫌いで判断しない
ここで大切なのは「基礎練習の方が好き」「曲を吹いている方が楽しい」というような「好き・楽しい」の着眼点ではなく、あくまでも「どちらの方が、よりたくさんの息を流して、クラリネットを鳴らせているか」ということを、客観的に考えることです。
好きだと思っていても、実は息が入っていない可能性もあります。
ですので、好き嫌いや、楽しい楽しくないの感情は、一旦置いておきましょう。
基礎練習から曲などの練習に入った時に、少し気を回して、自分の演奏の変化の仕方を気にしてみます。
- 指やリズムに気を取られて、息が入らなくなってしまう人(=基礎練習の方が得意)
- 指やリズムを気にするので、息を気にせずのびのび吹ける人(=曲などの方が得意)
どちらのタイプにより近いでしょうか。
自分の傾向がわかったら、良い部分を伸ばしながら、苦手を克服するための練習に取り組みましょう。
傾向別の練習方法と心構え
基礎練習の方が得意
基礎練習ではたっぷり鳴らすことができるのに、曲などの練習に入ると、どうも息が入らなくなってしまう、という場合は、基礎練習にはなくて曲にある大きな要素、すなわち指やリズムの不安を取り払うことが大切です。
得意な基礎練習をベースに、曲でも楽にたくさんの息を入れられるように、その不安を取り除く練習を取り入れていきましょう。
ロングトーンの時に、しっかり楽譜を見ながら、記譜(楽譜に書いてある音)と運指を一致させることに重点を置いた練習や、手を叩きながらリズムを歌ってみて、頭で考えるよりも、リズムを体に馴染ませる練習を行うと、良い結果に繋がります。
また、曲の練習をする際に、ロングトーンの息の流し方を意識しながら、ゆっくりとしたテンポで、息を入れ続ける自分と、指を動かす自分を、別人にするような気持ちで吹いてみるのもいいですね。
その場合、アーティキュレーションは、外して構いません。
「曲が苦手だと思うと、隠れたくなって息を入れたくなくなる」ということもありますので、苦手な箇所こそクラリネットに息を入れてみるという発想も大事です。
隠れようとして、うっかり失敗してしまうと「ほら、やっぱり…」とますます息を入れるのが嫌になりますが、しっかり吹いている時の失敗は、意外と前向きに捉えられるものですし、息をたっぷり入れたことによって、落ち着いて吹けてうまくいく、ということもあります。
基礎練習で、たくさん息を入れてまっすぐ良い音で伸ばせる、というのは、素晴らしいことです。
いつでも、同じ息の吸い方や体の使い方で吹けるように、基礎練習をしている時の吹き方を常に意識しながら、少しずつ曲の練習をしていきましょう。
曲などの方が得意
一方、曲の方がのびのびと吹けて得意、という場合は、無理して基礎練習に時間を割く必要はありません。
曲の方が得意だ、と感じる人は、基礎練習をしようとすると、曲に比べて1つあたりの音に対する時間がある分、息の吸い方やクラリネットにどう息を入れるべきなのか、など、どうしてもいろいろ考えてしまい、体の状態やブレスが不自然になりやすいのです。
もちろん、基礎練習をしなくていいとは言いませんが、体が硬くなってしまったり、息が吸えない・吐けない状態で無理に練習を重ねていると、その吹き方が当たり前になってしまい、せっかく曲を吹く時にできていたことが、全て良くない方向に進んでしまう可能性があります。
曲を吹いていて余裕がある時に、体の自由さや、どのように自然なブレスをしているか、少し気にしてみましょう。
そして、まずはスケールなど、少し動きのある練習をする時に、曲を吹く時と同じ状態で吹けているかをチェックします。
徐々に、音階をゆっくり吹いてみたり、ロングトーンに移行してみて、そこでも変化がないように練習を重ねていけると、基礎練習と曲の吹き方が同じになっていくはずです。
基礎も曲もしっかり吹けることを目指す
クラリネット演奏上達のために、基礎練習が大切なことは確かです。
しかし、基礎練習に軸を置いた方が良いタイプと、曲練習中心にした方が順調に進むことができるタイプに分かれることも事実です。
自分の得手不得手を知った上で、基礎も曲も差がない演奏ができることを目指して、練習を積み重ねていきましょう。