指かけに注目して右手を安定させよう
クラリネットを演奏している方が抱えているお悩みの中に、「右手がうまく使えない」「右手が痛い」など、右手に関するものがあります。
これは、もちろん右手自体の問題なのですが、その時に注目すべきは指かけ(サムレスト)です。
今回は、意外と気にしていない方が多い、指かけに焦点を当て、右手の悩みを解決していきましょう。
右手に関するよくある悩み
まずは、右手に関してのお悩みの種類を考えていきましょう。
- 右手のせいで楽器が安定しない
- 右手が痛くなる
- 右手がうまく使えない(指が回らない)
クラリネットは右手の親指で楽器を支えているため、これらの悩みを解決するには、親指に注目する必要があります。
そして、右手親指で楽器を支えるために不可欠なのが、指かけ(サムレスト)ですので、実は右手の悩みから解放されるには、指かけがその鍵を握っています。
指かけのちょうど良い高さを見つける
指かけ(サムレスト)が、クラリネット本体に固定されているタイプだと、悩みようがないのですが、今は可動式のものも増えているので、その場合は自分に合った高さを見つける必要があります。
固定式の場合は、このあたりについていることが多いので、可動式の指かけがついている楽器を使用している方は、一度これくらいの高さにしてみましょう。
レッスンをしていても、低すぎたり、あまり高さを気にしていない方が多いように見受けられます。
「右手の小指が届きにくいから、指かけは下にしている」という話を聞いたりもしますが、指かけ自体を下げて親指の位置を低くしても、人差し指から薬指までの3本が下がるわけではないので、ただ単に親指のみが下がり、親指の付け根や手首に負担がかかるため、痛みに繋がってしまいます。
まずは一番上まで上げてみて、その高さでは収まりが悪ければ、少しずつ下げてみましょう。
固定式の場合も、楽器を作る職人さんが、自身の経験と目測で指かけを取りつけているため、ほんの少し標準よりも高かったり低かったり、また、微妙に曲がっていたり、ということもあるので、どうしてもしっくりこない時には、「固定されているし、こんなものなんだろう」と諦めたりせず、リペアをしてくれる職人さんに相談するといいですね。
1mm以下の違いでも、負担が大きく変わることもあります。
また、固定式でも可動式でも、厚みのあるサムレストクッションをつけていると、その分親指は下がってしまいますので、そこも計算に入れるようにしましょう。
指かけと右手親指の角度を考えよう
次に、右手親指の角度について、考えてみましょう。
このように、楽器に対して親指がまっすぐに当たっていませんか?
この当て方だと、親指のほんの一点で楽器を支えるような形になってしまいますし、ちょうど関節の骨が楽器に当たってしまい、ぐらつく原因になります。
また、写真を見てもわかるように、人差し指~薬指が余ってしまい、指を立てるような形になるため、指穴(トーンホール)を確実にふさごうと、ぎゅっと握ってしまうような持ち方になってしまいます。
握るということは、力が入ってしまいますので、指を回そうとしても思うように回らない、ということに繋がります。
お勧めしているのは、下記のような持ち方です。
右手親指を、先程に比べて斜めに当てているのがおわかりになりますか?
このように親指を当てると、親指の爪の横のあたりが面で楽器に当たるため、安定感が増しますし、人差し指~薬指も、自然に指の腹を指穴(トーンホール)に当てられるので、力を入れなくてもピタッとふさげます。
力が入らなければ、当然指の自由度は上がりますので、指回しが軽やかになります。
では、2つの持ち方を、わかりやすく並べてみましょう。
左がお勧めの親指の当て方、右が力が入ってしまう当て方です。
親指のちょっとした角度で、他の指の形が全く変わってしまうのがわかりますし、見るからに左の方が手全体に無理がないですね。
親指の先の方を指かけに引っかけるのがなんとなく不安だったり、手が小さかったり親指が細くて支えきれないと、指の付け根の方を指かけに引っかけてしまったりしますが(私も昔そうでした)、それではなおさら人差し指~薬指が余ってしまうので、さらに力が必要になってしまいます。
指かけと楽器に対して、どのように右手親指を当てると、他の指が楽になるかを考えるようにしましょう。
親指に力を入れて楽器を支えようとしてしまうことも、痛みや不安定さに繋がりますので、親指が必要以上に上方向の力を指かけにかけないようにすることも大切です。
右手をうまく使うには指かけに注目することが必須
クラリネットを吹く際に、指かけ(サムレスト)に右手親指を引っかけるのは当たり前のことなのですが、当たり前すぎて、高さや当て方・引っかけ方まで気にしている方は意外と少ないのが現状です。
右手のお悩みがある場合は、今回お話したことを参考にしていただいて、指かけをうまく使って楽器を安定させ、右手の自由度を上げていきましょう。
自分に合った指かけの位置や、右手親指の角度が見つけられれば、演奏が見違えるはずですよ。