クラリネット首かけストラップで演奏の自由度を上げよう
大学生の生徒から「ずっと気になっているのですが、ストラップは使わない方がいいですよね?」と、ある日のレッスンで質問されました。
確かに、B♭クラリネットを吹いていると、あまり馴染みのないストラップ。
しかし、使ってはいけないわけではありません。
実際、私が中学生から師事していた先生も使われていますし、大御所と言われる先生も最近使用されているそうです。
では、ストラップにはどういった役割があって、どんなメリット・デメリットがあるのでしょうか。
ストラップって何?
アルトクラリネットやバスクラリネット、サックス属などのほとんどの奏者が、首から下げている紐状のものが、ストラップです。
ご存知の通り、クラリネットやサックスは、右手親指で楽器を支えています。
B♭クラリネットは、そこまで重量がないので気にならないと思いますが、アルトやバスクラリネット・サックス属は、楽器が大きく重たいので、「右手親指の負担を軽くする」というのが、ストラップの主な役割です。
バスクラリネットやバリトンサックスは、スタンドと呼ばれる棒状のものを楽器下部につけて、床面にスタンドを接地させることで、管体を支えることもできます。
ですので、これらの楽器に関しては「大きくてグラグラする楽器を固定するため」の要素が強くなり、バスクラに限定して言えば、スタンドがあれば、ストラップがなくても問題なく吹くことはできます。
(ただ、あった方が、さらに吹きやすくなります)
B♭クラリネットでストラップを使う意味は?
上記のように、主に大きな楽器に対して使われているストラップですが、B♭クラリネットにも用いる場合があります。
ここでの大きな目的は2点。
楽器の固定と右手の自由度のアップです。
先程「クラリネットやサックスは、右手親指で楽器を支えています」と書きましたが、楽器の支えはそれだけではありません。
右手親指を、サムレストと呼ばれる指かけに引っかけ、マウスピースをくわえることで、楽器は固定されています。
逆に言えば、アンブシュア(くわえ方)が安定していないと、楽器はぐらついてしまい、吹いている音も安定しなくなってしまいます。
そのような時に、ストラップは役に立ちます。
ストラップは、もちろん長さの調節ができますので、自分が良い状態に構えている時の長さに合わせることで、楽器が固定され、演奏中にくわえている位置が浅くなったり深くなったりすることが避けられて、演奏の安定度が増すのです。
右手を楽に使おう
もう一点、右手の自由度のアップについて、具体的にご説明しましょう。
手をグーにする要領で、親指とその他の指で、楽器をぎゅっと握ってしまっているのを見かけることが、よくあります。
これは、無意識のうちに「右手親指」と「口」の2点だけで楽器を支えることを不安に思っていたり、なんとなくその方が持ちやすく感じていたり、理由は様々ですが、いいことではありません。
握っているということは、もちろん力が入っているわけで、力が入っていれば、指の動きは鈍くなります。
クラリネットは、多々速い動きを求められる楽器ですので、鈍い指の動きでは対応できず、「練習してもしても全然吹けない!」なんてことになってしまいます。
これが、ストラップで解消されます。
握らなくても、楽器を支えられるようになるからです。
実際に、ストラップを使い始めた質問主の大学生は、「右手がすごく楽になって、指が速く回るようになった」と、嬉しそうにレッスンで話していました。
ストラップを使う時に注意すべきこと
ただ、気をつけなければいけないこともあります。
体や、楽器を吹く基礎ができあがっていない小学生や中学生が用いると、変な癖や変な姿勢が身についてしまう場合があるので、充分な注意が必要です。
「楽器を固定する」「右手の力を抜く」という点において、『楽器を重いと感じる世代』すなわちクラリネットを始めたばかりの子供達にこそ、ストラップは使わせてあげたいのですが、例えば首に集中的に負担がかかってしまって猫背になったり、長さの合わないストラップで吹き続けていることに気づかず、有効な使い方ができていなかったり…と、心配なことはいろいろとあります。
また、ストラップはあくまで補助として使うべきですが、初歩の段階で使い始めてしまうと、そこに頼ってしまって「ないと吹けない」になってしまうことも懸念されます。
正しく使ってこそ効果あり
もちろん、小学生や中学生だけではなく、これは誰にでも起こりうる話ですし、「ストラップを使うようになったら、目覚ましい進歩が!」という、魔法の道具でもありません。
不安であれば、周囲の人にストラップを使った演奏をチェックしてもらったり、相談をして、楽器を自由に操るための効果的なアイテムとして、正しい使い方をしましょう。