実技?聴音?楽典?音大受験で重要な要素とは
音楽高校や音楽大学の入試は、いわゆる普通科の高校・普通大学に比べて、専門的な受験科目が多く、受験期間も長期にわたります。
科目は、専攻実技、副科ピアノ、楽典、聴音、新曲視唱などなど。
(もちろん普通のお勉強も)
私は都立高の音楽科に通っていましたが、他の学校よりも入学試験の日程が長かったですし、音大に至っては1週間も入試が続きました。
この数ある受験科目の中での、重要な順、気になりますよね。
受験を控えた生徒や保護者、実技模試に参加された方など、多くの方々から「どんな割合で力を入れたらいいんですか?」と質問をいただきます。
「楽典はバッチリだけど、聴音と新曲視唱が苦手…」
「専攻は自信があるけど、副科ピアノが…」
そんな方も多いでしょう。
「じゃあ、得意なものをより伸ばす方向で!」と、どこかに力を集中させたら、受験科目が多くて大変な音高・音大受験も、なんとかなりそうな気がしてきます。
では実際に、どの受験科目が一番重要なのでしょうか。
答えは簡単、全て重要です。
普通大学とは違う音大受験事情
「そんな身も蓋もないことを…」と思われるかもしれませんが、音高・音大では、音楽を総合的に学ぶ準備ができているかどうかが大切なので、何か一つだけ秀でていても駄目なのです。
もちろん「全てが平均値で良い」ということではなく、「大きな偏りがあることは、良くない」ですので、勘違いはしないで下さいね。
例えば、専攻の楽器が同じくらいの実力で、合格ラインに乗っかるかどうか、という受験生が2人いたとします。
2人とも、実技試験では力を出し切り、甲乙つけがたい、しかしどちらかしか合格にできない、となった時に、当然総合力が勝る方が、合格を手にします。
ですので、どれかに力を入れるのではなく、自分自身の音楽力全体の底上げが必要なのです。
人生の岐路に立つということ
バランス良く音楽力の向上を目指すのではなく、「どの科目に力を入れようか」と考えている時点で、今後の音楽人生がちょっと心配になります。
ここで手に入れた総合的な音楽の力は、将来必ず役に立ちます。
その道を歩んできた人間が言うのですから、間違いありません。
「別にそんなことできなくても、クラリネットを演奏するのに困らないじゃん」と思っても、ではなぜ入試にその科目が組み込まれているのかを考えてみましょう。
音楽をやっていくのに、必要だからなのです。
ここで、科目の取捨選択をしてしまうことは、進むべき方向ではない道に踏み出してしまうことを意味します。
科目ごとの重要度を考えることがやめられたら、先程もお伝えしたように、音楽力全体の底上げをすべく、しっかりスキルアップしていきましょう。
演奏技術は経験で向上させられる
一方、専攻実技は「専攻」というだけあり、より良くできる人が求められます。
「クラリネット専攻で入学したいけど、あまり上手に吹けないんだ」なんてことは、あり得ないわけで、妥協せずに突き詰めた練習が必要です。
そしてそれは、入試の実技試験直前の音出し時間に、飛躍的に向上したりすることはもちろんなく、日々の積み重ねの集大成が、受験当日に発揮されるわけですので、本番に向けてできる限り演奏スキルを上げておかねばなりません。
しかし、いくら練習を頑張っても、いざ実技模試や実技試験に臨んだ時に、初めて感じる張り詰めた空気に緊張してしまい、全身の震えが起きたり、挨拶をすることもままならず、信じられないくらい自分の力を発揮できず、落ち込んでしまう、という受験生は多くいます。
これは「楽器の練習をきちんとしてきたかどうか」という話ではなく、自分が緊張した時に、どのような状態に陥るのかを、しっかり把握しておく作業をしてこなかった結果なのです。
受験当日、「やるだけのことをやってきて、今が最高の状態!!」と思っていても、緊張によって平常心でいられなくなってしまっては、その努力が台無しになってしまいます。
実技試験当日までに、緊張と、緊張した時の自分と向き合う機会を増やしましょう。
できることならば、1回でも多く知らない人の前・知らない場所での演奏経験を積むことが、お勧めです。
その経験により、本番で発揮できる力は、抜群に安定感を増します。
それは、東京クラリネット教室「音高・音大受験の実技模試」で、入試に近い状況を複数回経験した生徒が、回数を追うごとに自信のある表情に変わっていくことからも、一目瞭然です。
体験しなくてはわからないこと、体験すればわかることが、必ずあります。
それが、入試の場では遅いのです。
1回でも多く本番に近い場で演奏をしておく
人前でのソロ演奏は嫌…と、なるべく避けたくなる気持ちはよくわかります。
しかし、入試ではそんなことは言ってられません。
絶対に、複数の、しかもプロの鋭い目にさらされて、演奏せねばならないからです。
せっかく頑張ってきたことが、水泡に帰すことがないように、なるべく多く、実技模試などの実践の場を経験しておきましょう。