音大受験で求められる「対応力」とは
音楽を生業にしようとした時、「対応力」「臨機応変さ」というのは、とても大切なものです。
それはなにも演奏家だけに限らず、教育職に就いたり、舞台関係の仕事などでも同じと言えるでしょう。
そしてこの能力は、音楽高校や音楽大学を受験する時点で、大いに必要となります。
音高・音大受験で試験官が見ているのは、専攻楽器の演奏技術の高さのみに留まらず、総合的な音楽力や、その場に応じた対応力も含まれているのです。
では、入試において対応力が求められるシチュエーションを考えてみましょう。
待ち時間での対応力
音高・音大の受験では、待ち時間がとても多くあります。
例えば、専攻実技の当日だけでも、集合場所で待ち、音出しの部屋に入る前・出たあとに待ち、試験会場に入る前に待ち、会場内で待ち…と、「受験校にいる間、ほぼ待ち時間なのでは?」というくらい待ちます。
楽器を出している時とそうでない時では、当然気の遣い方が変わってきますし、それが暖かい教室なのか、寒い廊下なのかでも、もちろん違います。
また、体温や楽器の温度管理以外にも、過度な緊張をしないようにどうすべきかも考えなくてはなりません。
たくさんの受験生が、実技試験に挑もうとしている時、異様とも言えるくらいの緊張感でその空間が張り詰めます。
その空気に飲み込まれぬような準備も、しっかりしておき、落ち着いて待ち時間を過ごせるようにしましょう。
控え室での対応力
音出しのための控え室でも、対応力が求められます。
- いつ楽器を出せるのか
- どんな部屋なのか(広さ・響き)
- 何人で入るのか
- 音出しは何分なのか
など、わからないことだらけの状態で、その場その場での対応をしなくてはなりません。
おろおろしている暇はありませんので、状況を素早く掴み、順応していきましょう。
試験会場での対応力
試験会場では、部屋の広さや響き、試験官は何人いるのか、一緒に会場に入る受験生は何人なのか、その中で何番目に演奏するのか、などに加え、音階の試験がある場合は、調の指定がどのようになされるのか、また、演奏箇所の指示はどうやって行われるのか、等々、控え室以上の緊張感と、臨機応変さが求められるでしょう。
処理せねばならない情報が多い上、試験官は鋭い眼差しで受験生を見ています。
そんな状況に舞い上がってしまったり、真っ白になってしまっては、本来の力を発揮した演奏とは、ほど遠くなってしまいます。
ずっと頑張ってきたことを、しっかり試験官に見てもらうためにも、冷静に、かつ的確に対応していくことが大切です。
対応力を身につけるには実践あるのみ
高校で音楽科に通っていた私は、試験などでソロ演奏を何度もする機会がありましたし、友人達と毎月ホールを借り「おさらい会」と称して、人前で吹くことを定期的にやっていました。
そんな生活をしていた私でさえ、音大入試は特別な場だと、しみじみ感じました。
なぜなら入学試験は、知らない場所、知らない試験官、周囲は知らない受験生達、という、日常とはかけ離れた状況で行われるからです。
そして「この大学(もしくは高校)で音楽を学ぶにふさわしい人材なのか」という、厳しい目でジャッジをされるわけで、仲間内のお披露目演奏とは、全く違うのです。
自分の志望校の試験に関して、できるだけ多くの情報を仕入れておくことと共に、考え得る「対応力が求められる状況」を想定し、対策を練っておくことが必要です。
しかし、机上の空論になってしまっては、入試で役に立ちませんので、東京クラリネット教室「音高・音大受験のための実技模試」のような、本番さながらに、知らない場所・知らない人の前で演奏できる機会を、積極的に、貪欲に見つけ出し、対応力・臨機応変さをどんどん身につけていきましょう。