「8分の〇拍子」のカウント方法を正しく知ろう
ソロ曲だと、クラリネット用に書かれた作品以外では、あまり見られないように思うのですが、吹奏楽やアンサンブルなどでは、曲の途中でちょこちょこと拍子が変わったり、見慣れない拍子(変拍子)が出てくることがあります。
「4分の〇拍子」だと、そこまで数え方が難しくないと思いますが、それに比べて「8分の〇拍子」って、頻出するわりにわかりにくい…と思っている方も多いのではないでしょうか。
これは、「8分の〇拍子」という拍子の、基本的な考え方さえわかれば、難しいことではありません。
逆に言えば、カウントの仕方がわかっていなければ、楽器を持って呆然とすることになってしまいますので、この機会にしっかり把握しておきましょう。
「8分の〇拍子」の拍の捉え方
例えば今、バンドアンサンブルで新曲候補として挙がっている曲は、全編通しては、「8分の12拍子」もしくは「4分の4拍子」で進んでいくのですが、途中で「8分の6拍子」「8分の10拍子」「8分の13拍子」が出てきます。
「8分の6拍子」はさておき、「10」だの「13」だの、「どうやって数えればいいわけ?」という感じですよね。
そこで、まず押さえておくべきことは、八分音符が基準になる拍子において大切なのは「八分音符は、基本的に3つでひとかたまり」ということです。
まずは、「8分の〇拍子」でよく出てくるものを、しっかり理解しましょう。
「8分の」系の拍子で使われることが多いのは、この4つだと思います。
いずれも、前述の通り八分音符が3つずつで区切られていますね。
ですので、速いテンポで演奏される場合は、そのかたまりを基準に
- 8分の3拍子は1拍子
- 8分の6拍子は2拍子
- 8分の9拍子は3拍子
- 8分の12拍子は4拍子
として指揮をしたり、演奏することがほとんどです。
速い曲なのに「1・2・3・4・5・6・7・8…」なんて必死に数え続けていては、クラリネットを吹くどころの話ではなくなってしまいますので、大きな拍子でカウントするようにしましょう。
ただし、八分音符も併せて感じるようにしないと、演奏が崩れてしまいます。
数字ではなくてもいいので、必ず八分音符のカウントも、心の中で続けるようにして下さい。
また、ゆっくりな曲の演奏の時も、八分音符を並列的に並べて感じるのではなく、上記のような大きな拍子も感じながら演奏すると、音楽が流れて聞こえます。
3で割れ切れない拍子の時は
他にも、吹奏楽曲などで出てくる可能性のある拍子も、知っておきましょう。
先程までは、3で割り切れる拍子でしたが、当然3で割り切れない拍子というのも存在します。
特に「8分の5拍子」「8分の7拍子」「8分の8拍子」は、変拍子の中でも、比較的目にすることがありますが、3で割り切れないですね。
5拍子・8拍子であれば、3拍子と6拍子を参考に、「3」と「2」に分けることは、なんとなく想像がつきますが、7拍子の場合はどうなるでしょう。
「7なら、3で割って3のかたまりが2つと、余りが1拍の3拍子でしょ」
というのは、残念ながら半分正解で半分不正解。
拍子の考え方は合っていますが、八分音符のかたまりの最低単位は「2」になります。
楽譜にすると、このような感じです。
「あー、見たことあるかも…」という方も多いのではないでしょうか。
この楽譜からわかる通り、
- 8分の5拍子は、変則的な2拍子
- 8分の7拍子・8拍子は、変則的な3拍子
と数えます。
これらは、「しょっちゅう出てくる」というほど、よく使われる拍子ではありませんが、かと言って、「全然出てこない」というわけでもありません。
例えば、A.リードの『アルメニアンダンス・パート1』では、8分の5拍子のこの2パターンが、1小節ごとに交互に出てきますね。
その部分を演奏するのに、「8分の5拍子のパターンは2つある」「それが小節ごとに切り替わっている」ということがわかっていて吹けるのと、ただ音を5コ並べて吹くのでは、演奏の質が大きく変わってきます。
きちんと、拍の捉え方・数え方を知っておきましょう。
割り切れない拍子の場合、八分音符2つの拍の位置が異なることもありますが、この3つの拍子に関しては、ほとんどの場合、このパターンで演奏されます。
他にもある「8分の〇拍子」
頻度は少ないものの、最初に書いた「10」や「13」などの拍子も知っておきましょう。
こちらも、先述の通り「八分音符は基本的に3つでひとかたまり」と「八分音符のかたまりの最低単位は2」を応用すれば、どのように数えればいいかわかります。
譜例で見てみましょう。
このように、八分音符を3つと2つに分けるので、
- 8分の10拍子は、変則的な4拍子
- 8分の13拍子は、変則的な5拍子
となります。
先程も書いたように、八分音符2つのかたまりが、別の拍に来ることもありますので、それは曲の流れや記譜の仕方で判断するようにしましょう。
8分の8拍子と4分の4拍子は同じ?
さて、ここまで「8分の〇拍子」の様々なパターンを見てきましたが、ふと疑問が沸いた方がいるのではないかと思います。
それは、「8分の6拍子」と「4分の3拍子」、また、「8分の8拍子」と「4分の4拍子」はそれぞれ同じ拍子ではないのか、ということ。
確かに、八分音符の数は、「8分の6拍子」と「4分の3拍子」は6こ、「8分の8拍子」と「4分の4拍子」は8こと、どちらも同じですね。
しかし、前述の通り「8分の〇拍子」は八分音符3つのかたまりが、基本の数え方です。
一方、「4分の〇拍子」は、あくまでも四分音符が基準の拍子になりますので、「四分音符1つの中に、八分音符は2つ」ということで、カウントの仕方が異なり、「8分の6拍子」は2拍子で、「4分の3拍子」は3拍子ということになります。
八分音符のトータルの数に惑わされず、正しく拍子を掴みましょう。
余談になりますが、たまに4分の4拍子なのに、8分の8拍子に聞こえるように、1拍目・2拍目の裏・4拍目に、アクセントやテヌートが書かれていたり、その拍にだけ音がある場合があります。
(4分の3拍子を、8分の6拍子に聞こえるように演奏することもあります)
この写真の上2段は、とてもいい例ですね。
4分の4拍子の曲ですが、アーティキュレーションや拍の位置で、8分の8拍子が表現されています。
これは、作曲家がこっそりと別の拍子を織り混ぜている箇所ですので、大げさにアーティキュレーションをつけて、違う拍子がしっかり際立つように吹きましょう。
「8分の〇拍子」を難しく考えすぎない
ここまで細かく説明してきましたが、実際に演奏する時に、拍子の変化や変拍子、「8分の〇拍子」についてあまり一生懸命数えてしまうと、音楽の流れが滞ってしまったり、訳がわからなくなってしまいます。
まずは、メロディーをしっかり知って、その小節がどんなカウントになるのか把握し、そして、慣れてきたら歌いながら手拍子をしてみて、体に馴染ませていきましょう。
リズムや拍子は、とにかく慣れです。
自分のパートがすらすらと吹けるように、音源も効果的に使ってみて下さいね。